こんばんは。松です。
このssは、このブログの作者である松の森久保乃々観、仰々しく言うと乃々ちゃんの神話体系を記したものです。
新規乃々ちゃんが来る前から書いていたということもあり、暗めの話なので苦手な人は見ないでくださいね。
以下、ssです。
ある曇天の休日の午前、Pと乃々は2人きりで事務所に居た。それは2人にとって居心地のいい場所だったからだ。
Pはデスクで今までの乃々の仕事を見返していた。初ライブはもちろんレッスンルームの使用履歴、初めて事務所に来た日までデータは残っており、それを思い出してPは感慨に耽っていた。
乃々はソファに座って童話の短編集を読んでいる。プロデューサーの持っていた本で、拾い子の人魚を育ててきた老夫婦が唆され、その人魚を裏切るという話だ。
乃々との軌跡を思い返していたPはふと言った。
「そういえば乃々ちゃんってこの事務所に来る前はどんな感じだったんだろう。」
乃々は急いで体をデスクの方へ向けて早口で答えた。
「へ? ふ、普通です、ホントに何もなかったんですけど……」
明らかに何かを隠していると感じたPは、軽率だったと反省し、乃々の方へ体を向けて軽く頭を下げてこう言った。
「つまらないことを聞いて悪かった。今は今、過去は過去、聞くのは野暮だっ……」
言い切る前に乃々はPを宥めるように言った。
「あ、えっと、そんなつもりじゃ…… 」
続けて、改まった声で言った。
「でも、プロデューサーさんになら話してもいいかもですけど……」
Pはその声に何かを察して言った。
「その口振りだと何か色んなことがあったようだね、それにこんな言い方は悪いけど、そもそも乃々ちゃんの性格を省みると、乃々ちゃんの両親がアイドルとして送り出すとは考えにくいし、興味がある。もし良ければ何があったのかを教えてくれるかな?」
乃々はしばらく沈黙し、もうしばらくして腕を組んで悩んだあと、真剣な表情で答えた。
「はい、プロデューサーさんならきっと受け入れてくれるから答えます……!」
Pは念を押すように言った。
「信じてくれてありがとう、でももし話していて気分が悪くなったら途中でやめていいからね。」
さらにPはデスクチェアから立ち上がり言った。
「そうだ、確か飲み物があったと思うから飲みながら話そうか?」
乃々は飲み物の準備のために席を外そうとするPに、手招きしながら答えた。
「いえ結構ですけど…… そこまで長い話にはなりませんから。」
乃々はソファから腰を離して背筋を正し、何度か深呼吸をした後震えた声で語り始めた……
もりくぼは、小学生になる直前に引っ越しをして、知ってる人がいない中で小学生生活が始まりました。
人見知りのもりくぼはなかなか他の人に話しかけられません。
「そうだ、一緒に遊べばきっと……」
だから昼休みに一緒に遊んで見ました。だけどもりくぼは運動がヘタクソで足を引っ張ったり笑われたり……
何よりもりくぼがいない方が楽しそうだったので自然と一人で遊ぶようになりました。
ある日、ふと図書室に行きました。そして一冊の絵本を読みました。その本は、ピアスをつけた怖がりな少女が森の動物たちと仲良くなる、というお話でした。
「物語に出てくる動物さんたちは優しい、彼らはきっと私を拒まないし、私を一人にすることもない……」
「夢の世界ならもりくぼもみんなと仲良く……」
そこからもりくぼは絵本作家を夢見るようになりました。
あと、ある日にお母さんに友達の作り方について相談したんですけど、なんでできないのよと怒らせてしまいました……
今考えると、きっとお母さんも友達の作り方を知らなかったのかな…… とにかく、それから親に細かく相談するのはやめるようにしました。
でも、普段は優しいんですよ。誕生日は祝ってくれたし、いい点数を取ったら褒めてくれましたし……
さて話を戻します……時間が経って小学校高学年になりました。新学期には毎年のように、もしかしたら気の合う友達が出来るかもと期待をしてました。
ですけど、そんなことはなく…… いつも一人でおどおどしているもりくぼはいじめっ子に目をつけられてしまいました。
荷物を隠されたりポエムを晒し上げられたり…… 一番怖かったのは悪意に晒されていると常に怯えながら学校にいなきゃいけないことでした。
もりくぼは悪意に弱い生き物です。体を無意味に触られたり、頭のホコリをかけられたり…… だからあまり人がいない図書室や空き教室で、机の下に隠れて気づかれないように本を読んだりポエムを書いたりしました。
これも一度お母さんにも相談したんですけど……
貴女はいじめられてないの一点張りで……
「ああ、親はもりくぼのことは見てなくて、ごく一般的な人生を歩んだ架空の存在「森久保乃々」を見てる」
そう気づいて悲しくなってしまいました。そしてますます絵本やポエムにのめり込んで行きました。
「きっといじめっ子も悪魔の鏡のカケラが刺さっただけで、いずれ仲直りできるはずです……」
「サンドリヨンはきっと我慢して耐えたから報われました……」」
「絵本のお姫様みたいに、誰かがもりくぼを助けに来てくれたらいいな……」
そう思った時、昔読んだ絵本を思い出しました。あのピアスの怖がりな少女の絵本です。
もりくぼは少しでもあの少女みたいになれたら…… という一心でピアスを開けました。
お母さんやお父さんにバレた時は怒られると思ったんですけど、無反応でした。きっと娘が、ごく普通の小学生人生を歩んだ「森久保乃々」でないとわかってどうでもよくなったんだと思います……
そうして恐怖と孤独感に苛まれながら、もりくぼは中学生になりました。
中学校は小学校と人があまり変わらなくて、いじめっ子もいたのでそこから登校しなくなりました……
そうしてお家で本を読んだりポエムを書いている時、リビングで両親が話し合いをしているのが聞こえてきました。
どうやら娘が引きこもりになっているというのは面目が立たないから、芸能界に縁のある叔父のツテでアイドルの事務所に行くことになるとのことです。
やはりもりくぼより自身の見栄や体裁の方が大事なんだなと悲しくなりました。
だけど、何度も嫌な目に合ってなお新たな環境ならきっと誰かと仲良くなれるかも…… と叔父と共にこの事務所に来てプロデューサーさんやみんなと会えました…… ありがとうございます、ここで言うことじゃないかもですけど……
「……以上です。」
乃々は語り終えると力が抜けたのか、大きくソファに背中を預けた。
Pは話を聞きおえてからしばらく黙っていたが、ちょっと申し訳なさそうに頭を下げてから言った。
「最後まで話してくれてありがとう、思い出させて悪かった。話していて辛かったろう。」
乃々は姿勢を戻しながら答えた。
「ええ…… でも、プロデューサーさんが相手なら安心して言えました。言ったら気が楽になって力が抜けたというか疲れたような気がしますけど……」
それを聞いたPは窓の外を見て言った。
「おや、外が晴れてきているよ、外でお茶でもしようか、それともボクが何か買ってくるからここでゆっくりしてる?」
乃々はちょっぴりもじもじしながらも、期待のこもったような少し明るい声で答えた。
「なら、最近よさそうなカフェを路地裏で見つけたので、一緒に行きませんか? 一人で入るのはちょっと不安だけど、プロデューサーさんと一緒なら……」
乃々は微笑みながら、出かける準備をしていた。
以上でssは終わりです。
言い方が悪いかもしれないけど、普通に育ったらああした性格にはならないだろうって思うんですよね。だから過去を妄想して盛る…… のです。
でも、公式で過去について言及して欲しい気持ちもあるし、こっちで勝手に想像するから公式は乃々ちゃんに今を生かして欲しいと思う気持ちもあります。
ご覧いただきありがとうございました。