松のデレマスブログ

乃々ちゃん、なつきち、志乃さんを応援しています。「ノーティギャルズ」も好きです。あと毎日更新します。コメントもお気軽にどうぞ。可能な限り返信します。

【ss?】鳥さんと兵隊さん

こんばんは。松です。


  ここは北国。もうそろそろ冬が近づき、渡り鳥達が旅立ちを始めます。そんな渡り鳥の群れの中に、一羽まだうまく飛べない鳥さんがいました。その鳥は何とか群れの最後尾に着いていたものの、ぼうっと北風に吹き飛ばされ、群れから逸れてしまいました。最後尾ということもあり、他の鳥達は気づいていません。

  群れから逸れた鳥さんは、何とか群れの後を追いかけようとしたものの、風に動きを取られ寒さに体力を奪われついに地面に倒れて意識が遠くなってしまいます。


  しばらくして目を覚ますと、鳥さんは布をかけられて誰かの家の中にいました。辺りを見渡すと暖かなランプと水の張ったグラスがあり、窓からは月明かりが見えます。そして目の前には初老くらいの男がいました。
彼は、食べていいと言わんばかりにパンくずを差し出しているため、鳥さんはそれを啄みました。

  パンくずを食べ終わり、鳥さんは元気を取り戻した後、その男に言いました。
「ありがとうございます、おかげで助かりました、お礼に何かしてあげたいのですが……」
そういうとその男は、
「いいよお礼なんて。それより早く群れに戻らないと、渡り鳥なんでしょう?」
と返しました。
それに対して鳥さんは「いいえまだ大丈夫ですから、何かしてあげたいのです。」と答えました。
するとその男は、「なら頼みがある。明日ちょっと着いて来て」と言いました。




  次の日、鳥さんはその男の上着のポケットに入り込んでその男に着いていくことになりました。そしてその男が連れて来たところは、大きな扉の建物の前でした。
その男は言います。
「私は実はこの国の兵士でね、ここは食糧庫の門番をしているんだ。この倉庫には国民から徴収した食べ物がたくさん入っている……」
その男は鳥さんの目を見つめて言いました。
「そこで頼みがある。君のその小さい体でこの倉庫の食糧を、街の貧しい人々に分け与えてくれないか。」
鳥さんは答えます。
「いいですけど、そんなことをして大丈夫なんですか。」
その男は答えます。
「ネズミがやったといえば仕方がないで済むであろう。何よりこんなに貯蔵しているんだ、分けてやるべきだよ。」
鳥さんはその言葉に納得し、倉庫の壁の小さな穴から出入りして食べ物を取り出し、下町へと多少よろけながらも運び出して行きました。


  そして夕方になり、倉庫に鳥さんも戻って来てから、その男は一緒に家に戻ります。
その日の夜、その男は言いました。
「今日は私のわがまま、というか自己満足に付き合ってくれてありがとう。そろそろ群れに戻らないとキミも渡れなくなるだろうから、明日には行ったほうがいいよ。」
鳥さんは答えます。
「いいえ、大丈夫…… というか、私は飛ぶのが下手で群れから離れちゃったわけで、今から飛んでも多分戻れないわけで…… だからこれからも一緒にいます。」
男は少し考えた後こう言いました。
「わかった。ならこれからもよろしくね。」


  それ以降、その男が門番をしている間に鳥さんはこっそりと倉庫から食べ物を運び出し、人々に分け与えていきました。

  しかしある日、食糧があまりに減っていることを大臣に気づかれ、その男は国を追われることになってしまいます。
その男は出かける前に鳥さんに別れを告げます。
「やっていることがバレてしまって私は追われることとなった。今までありがとう、だけどこれからはお別れだ。」
鳥さんはそれに驚き答えました。
「なら私も着いて行きます。そもそも私は渡り鳥、この北国で一羽では生きていけません。」
その男は悩みながらもそう言いました。
「わかった、なら一緒に行こう。」


一人と一羽は家を出てどこかへと行きました。おしまい。



  途中で燃え尽きました。ただ、温めすぎると投げ出す・裏方で闇に葬る癖が出るので打ち切りエンドでも早めに出すのが大事だと思ってますので出します。
  ちなみに着想はオスカー・ワイルドの「幸福な王子」でした。


ご覧いただきありがとうございました。